私にとって初めての恋。
放課後になり美陽は玄関にいた。
珍しく早く帰る美陽を見た束李は、何故かニマニマと笑みを浮かべていた。
靴を履いて外に出ると、美陽は校門前が騒がしいことに気が付いた。

「?」

あまり気にせず通り過ぎようとした瞬間…。

「美陽!」
「え、何でいるの?」

美陽に後ろから声をかけたのは、美陽の家にいると思っていた楽だった。

「ちょっとした街探検。そのついでに美陽の迎えに来た」

楽と美陽の周りに人が集まり始める。
美陽は楽の腕を掴んで校門から離れた。

「私が目立つの嫌いなの知ってるでしょう…」

学校から少し離れ、家に近い曲がり角まで歩いた。

「ごめん。でも、美陽に会いたくて」
「家で会えるのに。…こういうことされると正直、迷惑」

楽は項垂れてまた謝る。

「次にこういうことしたら、向こうに戻ってもらうから」

美陽はそう言って先に家に向かう。
その後を追うようにして楽も歩き出す。

「美陽、変わったね。前はこんなにズバズバと言わなかったのに」

楽がそう言うと美陽は振り返る。

「私だって、成長くらいするよ」

楽は美陽に駆け寄り並んで歩いた。
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