紅い月が離れるとき
「そしたらカメラマンさん
が――だって!」
「ヒャハハハハ!! 死ぬ!
腹痛えッ」
それからあたしは
なるべく毎日病院に通った。
それで毎日楽しい話を
いっぱいした。
"外"の話はよく分かんない
から,あたしの周りで
起きたこと,友だちの話
なんかをした。
「もう6時…,あたし
もう帰るね」
「あ…そっか。
ありがとな!」
あたしは紅い月を
憎んでいた。
"パパはきっと,あの
紅い月にさらわれたんだ"
お父さんは交通事故で
死んだ。
現場に駆け付けたときには
もう亡くなってたらしい。
あたしは夜空に浮かぶ
紅い月を悪魔だと思った。