紅い月が離れるとき
…ビイィィ――ッ!!
《助けて……。
暁を……助けてっ!!》
心のなかで,必死に叫んだ。
恐怖とパニックで,
声が出なかった。
しばらくすると,
平口さんがやってきた。
「あっ,暁くん…!」
いろんな処置をして,
新しい点滴も持ってきて,
酸素マスクさせて――。
とにかく手際が良くて,
あこがれた。
なのにあたしはなんだろう?
暁が苦しんでるっていうのに
ただ泣いて,叱って……。
暁は……頑張ってたのに。
あたしは……?
「ふう。もう平気よ」
「あっ,ありがとうござ…」
情けなくて,涙が出た。
「柚苗ちゃん,暁くんは
大丈夫だったんだから」
「だってあたし……
なんにもできなかった。
すぐに平口さんを,
呼べなかった……。
パニックになって,怖くて,
体も頭も動かなかった…」
「暁くんが助かったのは,
あなたのおかげなのに」
「……へ?」
平口さんはニッコリ笑って,
話し始めた。
「だって,この病室に
あなたがいなかったら,
暁くんは発作で
亡くなってたかもしれない。
ほら,あなたは必要
だったのよ?
命の恩人じゃない。
暁くんが助かったのは,
柚苗ちゃん…
あなたのおかげなの」
平口さんの言葉は
まるで魔法だった。
キモチがすうっと
楽になった。