紅い月が離れるとき

気が付いたのは,
10時だった。


いつの間にか,
眠ってしまっていた。


暁のベッドの横のイスに座り
顔をもたげ,
眠っていた。


「…おはよ」


暁は,あたしの頭を撫でながら
見守ってくれてたようだった。


「もう,ヘーキ?」


「うん,ゴメンね」


「…え?」


「変なとこ,見せちゃった
からさ。
怖かった?」


あたしは,コクンと頷いた。


「そっか。
…あともうひとつ。
治療のこと」


すっかり忘れていた
あたしの頭のなかに,
暁に言ってしまった
ことが浮かんでくる。


「確かに,治療しないから
こうなっちゃったんだね」


「苦しいトキにあんなコト…
ゴメン……」


「いいよ,なんか効いた。
…治療,始めることにした。
全部,柚苗のおかげだよ」


……あたし,役にたてたんだ。

暁が治療を始めてくれれば,
暁は長生きするんだから。


もしかしたら――
病気だって治るかも
しれないし……。


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