紅い月が離れるとき
★ 暁と仕事
それから数週間後…。
ドラマの撮影が始まった。
スタジオには,見たことのある
ひとたちが
たくさんいた。
「ユズナちゃん,
台詞大丈夫…?」
「はは,練習では…」
手は汗ばんで震えるわ,
言葉はおぼつかないわで…
とにかく緊張のピークだった。
「じゃ,シーン8始め!
スタンバイしてー」
とうとう,あたしの番が
回って来た。
最後に台詞を
たたき込んで,
場所に向かった。
「よーい…カンッ!」
乾いた音が,スタジオに
響き渡った。
『聖名っ』
相手の子が演技を
始めた――…。