紅い月が離れるとき


暁は,強い薬のせいで,
高熱が出たり,
吐き気がしたり,


時々…あたしの前でも
我慢できなくなって
吐いちゃったり,
イライラしてしまうコトがあった。


「暁くーん,
夕食ですよー」


「…いらない」


最近は,全然ご飯を
食べない。


あたしが来れるのは,
夕方か夜だから,
夕食だけかと思ってたけど
違うみたい…。


「暁くん,ちゃんと
食べないと病気と
闘えないのよ?」


「オレが闘ってんじゃない。
薬が闘ってんだろ」


「薬が闘うとこが
しっかりしてないで
どうするのよ」


大体いつも――
こうやってケンカになっちゃう。


「平口さん待って?
暁だって辛いに決まってる
んです。
食べてももどしちゃうの…
辛くないわけないんです。
それでも食べなきゃ
いけないんですか…?」


「ええ。
食べなくちゃいけないわ」


冷静な目でそれを言う
平口さんは,
かっこよかった。


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