紅い月が離れるとき
結局暁は,ふたくち
食べただけだった。
そんな日が何日も続くから
辛かった。
「暁? あたしのドラマね,
来月やるんだよ。
ビデオあたし撮るからさ…
見てね?」
「…うん」
そのころの暁は,
ほとんどしゃべらなくて
話しかけても
頷くとか,言っても
"うん"だけだったりとか。
それでもあたしは
毎日暁のとこに行った。
暁がひとりで
寂しくないように。
暁に心配させないように。
面会拒否の日は,
平口さんに来たって
ことだけ,伝えてもらった。