紅い月が離れるとき


病室に戻ると,
暁が苦しそうに小さく
なって震えていた。


「暁ぃっ!」


「ゆ……ずな…」


暁の意識は戻っていた。


あたしはすぐに,
平口さんを呼んだ。


『はい?』


「暁が…暁がっ!」


暁は声を出さず,
小刻みに震え,
目に涙を浮かべていた。


呼吸は荒く,
不規則で,見てるこっち
まで苦しくなった。


「暁っ,しっかりして!?
もうすぐ,平口さんトカ
お医者サンが来るから!」


暁は,コクリと頷いて
また苦しんだ。


あたしには,
どうして苦しいのか
どこが苦しいのか
わからなくって,
なんにもできないで
ただただ…側で
声をかけて励ました。


"死なないで…"


心のなかはグシャグシャ
だった。


いままでのことが
ゆっくりと
頭をよぎった。


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