恋愛ノスタルジー
*****

重い気分のまま週末がやって来た。

街はクリスマスムード一色で、いつにも増して浮き足立っているようだ。

「何がクリスマスよ。みんなウハウハしやがって」

スマホから聞こえる美月の低い声に私は苦笑した。

「美月」

たしなめるように私が名前を呼ぶと、美月はフン、と鼻をならした。

「で、今日から榊さんの家に泊まり込みでアシスタント?」

「うん……」

「圭吾さんは?」

「話したけど……また気まずくなっちゃって」

「……」

「花怜さんと上手くいってないのか分かんないけど、とにかくなんかあったみたいなの」

「なんでわかるの?」

「だって、イライラしてるもの。行くなって言うし。自分の恋愛が上手くいってれば私が凌央さんの家に泊まり込んでも気にならないでしょ?」

「……で、あんたを代わりにしたって言ったの?」

「うん」

「……」

美月が深い溜め息をついた。

それから呆れたように続ける。

「……ねえ、仕事のできるイケメン社長にもアホっているのかな」

「へ?」

本当に美月は口が悪い。美人なのに。

毒舌の後にはクスッと笑い声が響く。

「なんでもない。とにかく私には逐一報告しなさいよ?!じゃあね」

「あ、待って美月……」

……切られた。

私はガクッと肩を落とすと昼休みのため皆が出払ったオフィスで溜め息をついた。
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