恋愛ノスタルジー
「私を怒ってないの?あんなに酷いことをした私を」
あの時は……確かに恐かった。
でももう私は圭吾さんに庇われたし、立花さんの凌央さんに対する気持ちを考えると……責める気になれない。
だから私は出来るだけ立花さんが安心出来るように笑った。
「もう過ぎたことですし、私も……あなたを傷付けてしまったし……おあいこです」
「おあいこ?」
私はコクンと頷いた。
「立花さんの仰る通りです。私は……愛のない結婚に失望して卑怯な事をしてしまったんです。汚らわしいと思われても仕方ない人間です」
立花さんが眼を見開いて私を見つめた。
「あなた……」
その時、コートのポケットでスマホが鳴り始めた。
……ん?
知らない電話番号だ。
「ちょっとごめんなさい」
立花さんに断り、スマホをタップすると思いがけない人物の声が流れた。
「峯岸彩様ですか?私、夢川圭吾社長の第一秘書をさせて頂いております黒須と申します」
「黒須さん、御無沙汰してます」
「社長が……社長が倒れられました」
「え」
「数日前から具合が悪かったみたいなのですが、ブラジルの企業との共同開発中の事案にトラブルが発生してしまいまして……社長自ら対応に当たられて休む暇がなく、会議中に意識を無くされてしまいまして、」
あの時は……確かに恐かった。
でももう私は圭吾さんに庇われたし、立花さんの凌央さんに対する気持ちを考えると……責める気になれない。
だから私は出来るだけ立花さんが安心出来るように笑った。
「もう過ぎたことですし、私も……あなたを傷付けてしまったし……おあいこです」
「おあいこ?」
私はコクンと頷いた。
「立花さんの仰る通りです。私は……愛のない結婚に失望して卑怯な事をしてしまったんです。汚らわしいと思われても仕方ない人間です」
立花さんが眼を見開いて私を見つめた。
「あなた……」
その時、コートのポケットでスマホが鳴り始めた。
……ん?
知らない電話番号だ。
「ちょっとごめんなさい」
立花さんに断り、スマホをタップすると思いがけない人物の声が流れた。
「峯岸彩様ですか?私、夢川圭吾社長の第一秘書をさせて頂いております黒須と申します」
「黒須さん、御無沙汰してます」
「社長が……社長が倒れられました」
「え」
「数日前から具合が悪かったみたいなのですが、ブラジルの企業との共同開発中の事案にトラブルが発生してしまいまして……社長自ら対応に当たられて休む暇がなく、会議中に意識を無くされてしまいまして、」