恋愛ノスタルジー
なのに圭吾さんがいるだけで、辺りがパッと華やぐように感じる。

ああ、やっぱり圭吾さんは綺麗だしカッコイイなあ……。

「きっと年内にブラジル企業との共同開発の件をうまくまとめておきたいのでしょうね」

まだ病室のレンタルパジャマだけど、イケメンはなに着ても素敵……。

その時だった。

「彩様。聞いていらっしゃいますか?社長に見とれすぎです。そんなに社長が大切なら入院中くらいお休みになるようにとご注意なさったらいかがですか?」

黒須さん……!

いくらこの病室が広くても圭吾さんに聞こえる……。

とんでもない黒須さんの暴挙に、私は息をするのも忘れて硬直した。

それからゴクリと生唾を飲み、唯一動かせる眼でそっと圭吾さんを見る。

案の定、圭吾さんが私を見ていた。

……どうしよう。

バチッと眼が合い更に硬直する私の前で、圭吾さんはテーブルの書類をトンとまとめた。

それから書類を持つ手を黒須さんへと伸ばすと、静かな口調で言った。

「黒須、お前はもう帰っていい。今日はイヴだし休日だ。明日も休んでいいからゆっくりすればいい」

「え、でも」

黒須さんが少し戸惑ったような顔をしながら圭吾さんのベッドに歩みより、書類を受けとる。
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