恋愛ノスタルジー
そんな圭吾さんを見ているとグッと胸が痛くなって、思わず私は唇を引き結んだ。

私の気持ちは秘密だ。

でも、圭吾さんに気を遣わせたくない。

ゆっくりと息を吸うと、私は出来るだけ軽い口調でこう言って笑った。

「本当に好きなら、立花さんに後を任せたりしませんよ。私はあくまで凌央さんの画家としての才能に惹かれているだけですから」

それよりも……圭吾さんは大丈夫なんだろうか。

だって今日はクリスマスイヴなのに入院だし、それを花怜さんに伝えてないってことはイヴは会わないって事で……。

だからって明日も入院だし、じゃあ花怜さんは一体……。

「圭吾さん、あの……大丈夫ですか?」

圭吾さんはまるで私の声が聞こえないかのように眼を見開いている。

……なに?どうしたの?

ま、まさか急に具合が悪くなったんじゃ……!

「圭吾さん?大丈夫?!先生を呼びましょうか?!」

驚いたように私を見ていた圭吾さんが、我に返って咳払いをした。

「……ああ……大丈夫だ。点滴が効いたみたいで目眩は治まった」

ああビックリした。容態が急変したのかと思って……。

私がホッとして肩の力を抜くと、圭吾さんは小さく息をついてベッドに横たわった。

「……彩、ここに来て座ってくれ」

少し離れたところで立っていた私に、圭吾さんはそう言うと引き続き口を開いた。

「悪かったな」

枕元の椅子に座った私を、圭吾さんは斜めに見つめた。
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