恋愛ノスタルジー
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突拍子もないことが起きたのは、翌日のクリスマス当日だった。

午後から半休を取った私はそのまま圭吾さんの入院する病院へと向かった。

「さあ、帰るぞ」

「は?」

病室のドアをノックして開けた途端、ネクタイを結び終わった圭吾さんがこちらを振り返ってこう言い放った。

硬直する私をチラリと横目で見ると、圭吾さんはまるで他人事のように語る。

「主治医は過労だといってたから、もう十分やすんだ。それに精密検査の結果は一週間も先だ。後で封書で送ってもらえばいいだろう」

う、嘘でしょ?先生は三日間の入院だって……。

「それによく考えてみろ。過労はストレスを避け十分な睡眠と栄養が要るんだ。ここにいたらその全部が不足する」

は?なにそれ。

「いや、でも……」

「おまけに俺がここにいたら会社的にも大打撃になりかねない。年末までには缶詰の輸出量と木材の輸入を今の二倍にしてやらなければ」

してやらなければって。

やだ、どうしよう。

この暴挙を止められるのはいったい誰なだろう。

く、黒須さんは?!黒須さんなら……。

「黒須なら、今頃日本海の宿へ美味い蟹を食いに向かっているだろうな。休暇とセットで航空券とわが社の契約会社傘下の宿の宿泊券をくれてやった」

あ……。そう言えば黒須さんは休みをもらってたっけ。

それにしても……私が黒須さんを求めているのを素早く察知するなんて……な、なんて勘が鋭いのかしら。
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