恋愛ノスタルジー
「じゃあね、彩さん」

「はい。お二人とも、また」

ペコリと頭を下げて踵を返すと、私は圭吾さんへと駆け出した。

「圭吾さん!」

「彩」

圭吾さんは凌央さんに会釈をした後、私の肩の荷物を取り、口を開いた。

「何故言わないんだ。俺を起こしたら送ってやれたのに。早く乗れ」

その眼がまたしても不機嫌そうだったけど、ここは私も負けていられなかった。

「圭吾さんは過労で倒れたんですよ?休んでないといけない人に言えるわけないじゃないですか」

少しだけ強くこう言うと、私は先を続けた。

「どうして私がここだと分かったんですか?」

だって、私は凌央さんの家を誰にも教えた事ないもの。

すると決まり悪そうに私から眼をそらして圭吾さんは口を開いた。

「彼の住所は……知り合いに聞いた」

知り合いに……。

二人とも経営者だし、共通の知り合いがいても不思議じゃないけど……。

「……どうして?」

「……」

だって子供じゃないんだから自分で運んだ荷物くらいひとりで持って帰ってこられる。

……それとも、私を花怜さんの代わりにしちゃったお詫びかな。

「圭吾さん。私もう怒ってないんで大丈夫ですよ。それより、付き合って欲しい所ってどこですか?」
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