恋愛ノスタルジー
「ちょっと美月、何言う気?!」

私が焦ってそう言うと、美月は真面目な顔をして返答した。

「最初、アンタ達の恋を静観しようと思ってた。私、他人の恋に踏み込むの嫌いだから。でも世の中にはね、《ボタンの掛け違い》で結ばれない人間もいるのよ。私は彩にそうなって欲しくない。だから今回ばかりは首を突っ込む事にする」

「美月……」

「じゃあちょっと失礼」

美月は座ったままの私を斜めに見下ろした後、踵を返して颯爽と店の外へ出ていってしまった。

嘘。本気なの?!……どうしよう……。

酔った美月がおとなしいわけがない。

ええっと……圭吾さんも確か今日が仕事納めで、その後は会社の役員さん達と軽く会食だと言っていた。

……じゃあ……大丈夫かも。

だってあの圭吾さんが食事会の真っ最中に私の電話なんか出るわけないもの。

そう思うと少しホッとして、私はビールを一口飲むと背もたれに身を預けた。

圭吾さん……クリスマスは入院しちゃったから花怜さんと会えなかったけど……大晦日とかお正月はどうするんだろう。

いや、そんなの考えなくても予想はつく。

今度こそ、圭吾さんは花怜さんと新しい年を迎えるに違いない。

圭吾さんの端正な顔が胸に浮かぶと、そんな彼が愛してやまない人の存在に胸が焦げそうになる。

圭吾さんに抱き締められるのは私じゃなくて花怜さんなのだ。

そんな想像したくないのに、勝手に考えてしまう自分が嫌でたまらない。
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