恋愛ノスタルジー
……やられた。

撃ち抜かれた、胸を。

それから、落ちた。

今まさに、雨上がりの空を眩しそうに見上げたその横顔に私は恋に落ちたのだ。

恋ってこんなにすぐに落ちるものだった?

自問自答したものの、私は思わず首を横に振った。

もしかしたら、既に落ちていたのかもしれない。

あの画廊でこの人の画を見た時に、私は既に恋をしてしまっていたのかも知れない。

だとしたらこれは運命なんじゃないだろうか。

いや、聞くまでもない。私にとってこれは絶対に運命の恋だ。だからこんな風に巡り逢えたんだ。

身体中で何かが弾けるような高揚感。

ギュッと切なく鳴る心臓。

ああ、長い間忘れていたけど、好きって確かこんな感じだった。

その時ハッとして、私は少し息を飲んだ。

そうだ……婚約したんだった、私。

すぐに圭吾さんの冷たい顔が脳裏に浮かぶ。

それから、

《いくら昔からお父さんと約束していたとしても早まっちゃダメよ》

という美月の言葉も。

ようやくこの時になって初めて、私は婚約を止めさせようとした美月の気持ちが分かったのだった。
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