恋愛ノスタルジー
……もしも……もしもその男が地位も名声も手にした眉目秀麗な男だったら?

俺と違い、愛情表現が豊かで彩の気持ちを捉えて離さないようないい男だったら?

つくづく、嫌な予想は的中する確率が高い。

彩の意中の男は申し分のない男だった。

激務のストレスに加え、強烈な後悔と嫉妬心。

それが余計に彩と自分自身を追い込んでいく事になる。

耐えきれず彩を抱き締めて眠り、ある時はその唇を奪った。

花怜なんて恋人はどこにもいないのに、彼女を大切にしろと泣く心優しい彩。

あと少しで契約が成立し、仕事が片付くという時、俺は会議中に意識を失ってしまった。

医師が言うには極度の過労らしい。

そんな中、絶望的だと思っていた俺に一筋の希望が射し込んできた。

彩が、俺を心配してあの実業家であり画家である榊凌央の元から駆け付けてくれたのだ。

髪を乱し、涙の跡を残した彩の顔を見た俺は、嬉しさに胸が踊るようだった。

イヴは病院から帰れないが、クリスマス当日は何としてでも帰って彩と過ごしたかった。

それから、これをきっかけに真実を話し、彼女の心を手に入れたい。

だからこれが最後の嘘だ。

彼女の好きなジュエリーショップに連れていき、好きなアクセサリーを選ばせる。

そしてそれを捧げ、彼女に心から謝り愛を告げる。

何としてでも年末……年が明けるまでには真実を告げたかった。

そんな俺に、一本の電話が入った。
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