恋愛ノスタルジー
「……なんで?!」

そのぎこちない表情に今度は私が驚く。

「え?いえ……何だか浮き浮きした感じだしテンション高いし。何かあったのかなって」

「なにもないよ?!」

両手の平を私に向けてブンブンと振る様子は明らかにいつものオットリしたアキさんとはかけ離れてるけど……。

その時、

「アキさん、呼んできたよ」

廊下に美月が見えた。

「あっ、うん、うん!ありがとう美月ちゃん!」

……ん?!

凄く不自然なアキさんの声に驚いて彼を見上げれば、美月を見た後にこちらを向いた彼の顔がカアッと赤くなるのが分かった。

「あ……、えっと俺、」

このドギマギする態度って……もしかして。

「……アキさん……もしかして美月のこと……」

「えっ、なっ……!」

真意を確かめたくて思わず凝視してしまった私にアキさんがアワアワし、やがて諦めたように小声で言った。

「……正解……」

「きゃあーっ」

驚きのあまり小さく叫んでしまった私にアキさんが飛び付く。

「な、内緒!」

「は、は、はい!」

大きなアキさんの手に口を塞がれ、声の出せなくなった私はコクコクと頷いた。

そんな私を至近距離から見て、アキさんが恥ずかしそうに囁いた。

「綺麗で強い美月ちゃん見てると凄い力が湧いてくる気がしてさ」

……うん、うん。アキさん、見る眼ある。

「頑張ってね、アキさん!」

「……うん」
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