恋愛ノスタルジー
あからさまに眉を寄せた圭吾さんは、まるで駄々をこねる子供みたいだ。

「プッ!」

ダメ、おかしくて我慢できない。

「笑うな」

「だって可愛くて」

可愛いと言われたのが癪だったのか、圭吾さんは私を睨むと少しだけ乱暴にキスをした。

ルージュを塗り直す時間はもうない。

「もう、圭吾さんっ」

「……なあ、彩」

「はい?」

私が少し眉をあげて返事をすると、圭吾さんが柔らかい眼差しで私を見下ろした。

「一週間後の披露宴は峯岸グループと夢川貿易、それからそれに絡む企業向けのものだ」

「……はい」

そうだ。

この結婚披露宴は私たちの為と言うよりはそれ以外の重要行事といった感じだ。

だから着るドレスやお料理、招待客すら私は知らない。

全て担当者に丸投げ状態だ。

……圭吾さんと思いを通わす前は正直、何もしなくて楽でラッキーなんて思っていた。

でもこうして両想いになった今は……実は寂しい。

そんな私の気持ちを察したかのように圭吾さんが言った。

「半年後を目処に俺達の結婚式をしないか?本当に祝ってもらいたい人だけを招待して」

「……」

「……彩?」
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