恋愛ノスタルジー
「嬉しいけど今日は鴨肉のコンフィを作る予定です」

「鴨肉のコンフィ?なんだそれ」

何度も何度も作り方を読んだし、家で練習もした。

だから私は意気揚々と答えた。

「コンフィとは、低温の油で煮るお料理ですって」

「ですって、て。作ったことあんのかよ」

「ちゃんと練習してきましたよ!」

すると凌央さんは意外だと言ったように眉をあげた。

「……へぇ……じゃあ楽しみにしとくわ。俺はまだ作業が残ってるから何かあったら呼んでくれ」

「はい!じゃあキッチンお借りします」

ちょっと緊張する。

だって、凌央さんの為に料理を作るんだもの。

私はドキドキと鳴る胸を、凌央さんに気付かれないように押さえた。

*****

数時間後。

マンションに帰りシャワーを浴びた後、ベッドに仰向けに倒れ込むと私は今日の幸せを噛み締めた。

凌央さんと一緒に鴨肉のコンフィを食べてワインを飲んだこと。

美味しいと褒められた事。

明日からは本格的に家事や画のお手伝いをすること。

それから……彩と呼ばれた事。
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