恋愛ノスタルジー
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三時間もの間、私は尊さんのイタリアンレストラン《brillare》ブリッラーレのオープンパーティーを楽しんだ。

時計を見ると既に午後十一時過ぎ。

……あまりにも楽しくてすっかり遅くなっちゃった。

マンションのアプローチの手前でタクシーから降りた私は、フウッと息を吐いた。

でも大丈夫。

だって圭吾さんは今晩遅くなるって言ってたもの。

圭吾さんの『遅くなる』は確実に午前0時を過ぎる。

だから大丈夫。さっさとお風呂に入って寝よう。

「たーだっいまー!」

そう。こんな弾けた独り言も、聞かれる心配はない。

ところが、

「何時だと思ってるんだ」

「うわぁっ」

ライトが点いた途端、至近距離で低い声が響いた。

ご機嫌で勢いよく開けた玄関ドアの向こうに、なんと圭吾さんが立っているではないか。

しかも不機嫌オーラ全開の仁王立ち。

なんで?!どうして?!

凄く驚いて頭の中はパニックなのに、機敏な動作がとれない。

「圭吾さん、お帰り……うわっ!」

「っ!」

酔っ払っている挙げ句に驚いて足がもつれ、カツンという音とともにハイヒールが後方に飛んだ。
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