恋愛ノスタルジー
「あの、どうしたんですか?」

「すっかり日が落ちているのに、何故送ってもらわないんだ。そいつはお前に何かあったらどうするつもりなんだ」

お、お前!

……お前って……私だよね、この流れは。

少し前まで確か『君』だったように思いますけど……。

まさかの格下げ(?)はこの際スルーしたとして、私を心配する言葉にトクンと鼓動が跳ねた。

凌央さんを誤解されてるのは複雑だけど、私を心配してくれているのは正直嬉しい。

暗い車内で圭吾さんの表情を窺うも、相変わらず苛ついている様子しか分からない。

「ありがとう……心配してくれて」

デジャヴというわけじゃないけど、なぜか急に婚約パーティの夜の出来事を思い出した。

あの時タクシーの中で『先に一緒に住みませんか?』と言われて、ドキドキしたっけ。

けれど何故か、一緒に住み始めた頃から圭吾さんは冷たくなってしまって、私達はろくに会話もしなくなった。

でも近頃は、その関係が少し変わってきたように思う。

一体何がきっかけかは分からないけれど、こんな風に話せるのは嬉しい。

だって、たとえ政略結婚でも仲良くしていたいもの。

私は圭吾さんに笑いかけた。

「私、逞しいんですよ。だから多少暗くても平気です。それに週末で人も多いし。凌央さんは今凄く忙しくて」

「……」

「あっ!そういえばお腹すいてますか?夕飯どうします?」
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