恋愛ノスタルジー
私はそう言いながら圭吾さんに袋を手渡したけれど、店内での彼の様子を思い出して思わず吹き出した。

「……なんだ」

「だって圭吾さん、片っ端からオーダーするんだもの!こんなに食べきれませんよ?」

ガラスケースを覗き込んだ圭吾さんに普段のクールさはなく、まるであどけない子供のようだった。

クスクスと笑いながら見上げると、圭吾さんは私から顔を背けた。

「あまりにも綺麗で美味しそうだったから、つい……」

「もし残ったら明日の朝、食べましょうね」

「……ああ」

圭吾さんのマンション付近は街路樹全てに淡いパープルのLEDが巻かれていてなんとも幻想的だ。

「綺麗ですね、圭吾さん」

「……そうだな」

頷いた圭吾さんの横顔はイルミネーションによく映えていて、私は眩しくもないのに両目を細めた。


****


「で、なにか進展はあったのか」

「……なにもありません」

「その男と彼女の関係は分かったのか?」

「分かりません。凌央さんは何も言いませんでした」

「お前は聞かなかったのか」

「そんなの、怖くて聞けませんよ」

いつの間にか私の恋愛相談室と化した夕食時、圭吾さんはワインを傾けた後私を静かに見つめた。
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