恋愛ノスタルジー
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『今何処にいる?迎えにいく』
……圭吾さんからラインだ。
「もうすぐ駅につきますから大丈夫ですよ」
『じゃあエスカレーターの所で待ってる』
「……はい」
地下鉄からコンコースで直接つながっている圭吾さんのマンションまではほんの五、六分で心配ないのに……どうしたんだろう。
声は普通だったけど……何かあったんだろうか。
改札を抜けてしばらく歩いていると、いつもの長いエスカレーターの先に圭吾さんを見つけた気がした。
人混みを避けるように頭を動かして前方を見つめると、やはりそれは圭吾さんだった。
「圭吾さん」
口の中で名前を呼ぶと、圭吾さんもまた僅かに唇を動かした。
何だかドキドキする。
だって凄く柔らかくて、今までとはまるで違う表情をするんだもの。
「彩」
「圭吾さん」
「彩」
真正面で立ち止まると、圭吾さんが私に手を伸ばした。
頬に彼の温かい手が触れる。
思わず眼を見張る私に圭吾さんはぎこちなく笑った。
「……寒くないか?」
切れ長の眼が少し照れたように瞬いて、私は信じられない思いで彼を見つめた。
……なにこれ。
萌えるんだけど。
だって圭吾さんが……私に向かってこんな顔をするなんてあり得ないもの。
あんなに冷たかったのにフワリと笑ってみたり照れた顔を見せたり。
イケメンだけに、余計萌える。
どうしちゃったんだろう、酔ってるとか?