恋愛ノスタルジー
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「ほお~……それでそんなぶっ細工な顔で出勤しちゃったんだ」

酷い……泣いたのと寝不足が合体し、確かにいつもより不細工だけれども。

でも、それに反論する気力が私にはなかった。

「成瀬さんー、私は罪人です」

十時のブレイクルームで、私はガックリと項垂れた。

「罪人はあんたじゃなくて旦那でしょうよ。恋人がいながらあんたに手を出したんだから。それともなにか?恋人と破局してあんたに鞍替えしようとしたとか」

私はその言葉を聞いてブンブンと頭を振った。

「ないです、絶対。圭吾さんは私みたいなタイプ、嫌いなんです」

「ははは!やっぱり?」

「ちょっと!成瀬さん!」

恨めしそうに私が睨むと、成瀬さんは更に笑った。

「あんたって、人を疑う事をまずしないじゃん?あんたといるとたまに自分が酷く汚れてる気がすんのよね」

え。

私は驚いて首を横に振った。

「そんなことありませんよ。私はズルい人間です」

だって元に、婚約者がいながら他の人に恋をしたもの。

私は涙を拭きすぎて水分を含み、小さくなったティッシュを目頭に押し当てながら言った。

「それに私、圭吾さんはそういうことしない人だと思ってたのに……ショックです」

そんな私を見つめていた成瀬さんは、優しく微笑んでテーブルから新しいティッシュを取ってくれた。

「何でも、どんな事にも、理由が存在するのよ。彼に聞いてみなさい」

「圭吾さんに?そんなの出来ない。だって恐いです」

「なんで恐いのよ」

「……色々……です」

……そうだ。私は色々……恐い。

「一つ教えてあげる」

曖昧な言葉を返した私に、成瀬さんは優しい眼差しで笑った。

「あんたは、悪くない!」

また泣きそうになる。

成瀬さんの微笑みが嬉しいのに申し訳なくて、私は小さく頭を下げた。
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