御曹司様はシンデレラを溺愛する
「不躾でした。申し訳ありません。あまりにもあなたの仕草が可愛らしくて、つい見入っていたのです」
仕草が可愛らしく?
どこがそう見えたのだろう?
まさかもうボロが出て、それを彼は遠回しに可愛らしいと言っているのかもしれない。
優里亜なら、どうする?…
「レディに対して、その言葉は適切ではありませんわ。身長は低いですが、わたくし…」
「気分を害してしまいましたか?」
足を止め、覗き込むように腰を屈めた隣のハイスペック男子と視線が重なると、どこか含みのある笑みを浮かべてからかわれているようで落ち着かない。
「…はい、とても」
負けてなるものかと、お嬢様らしくない顔で睨んでしまっていた。
「…フッ、ふふふ。この僕に対して…ふふふ、ふッ。楽しい女性だ。あなたの事が気に入りましたよ」
耳を疑う言葉が聞こえて彼を凝視していると、乗せていた手を柔らかく握られ
「階段を上りますよ」
と微笑まれ、彼のエスコートで階段を上りきれば、足毛の長い真紅のジュータンが広いホールを埋め尽くしていた。
辺りに置かれている数々置物や絵画が、高額の金額だろうと察するほど、そこは場違いな場所だった。