御曹司様はシンデレラを溺愛する
「その麻生本社には、誰が行くか決まってるんですか?」
「正式な発表はまだだけど、今いるスタッフから選ばれて行くと思うよ。大手との初契約だから新人になんて任せられないからベテランが行くでしょう!」
「そうですよね」
ホッとして、大きく息を吐いた。
「須藤さん、行きたいなら推薦するわよ」
「いえ、大丈夫です。折角、皆さんと仲良くさせて頂いて仕事も楽しいので、このまま、一緒に働かせてください」
チーム長からの親切を丁寧に断った横で、小さなお子さんがいる女性が話に入ってきた。
「麻生の本社に行けば若いあなたに出会いがあるかもしれないのに、こんなおばちゃん達とショッピングモールの清掃員なんてしていたら、いい男に出会えないよ」
その麻生の本社がまずいんですけど…
「今は、お金を稼ぐ方が大事ですから、彼氏なんていらないです」
「あんたみたいな若い子がもったいない。いつまでも若いと思ってたら、あっという間におばあちゃんになるんだけどね。さて、仕事再開しようかね」
チームの年長者で、腰の少し曲がった女性が腰を叩きながら、立ち上がったのを合図に、皆、仕事を再開する為に動き出した。