御曹司様はシンデレラを溺愛する

「いい男だって!見に行く?」


どこかのテナントの若い従業員が、興味深々といったようにはしゃいでいる。


「私達には、関係ない話だったね」


興味ないのは、おばちゃん達と私ぐらいだ。


「さて、二階の掃除に行こうかね」


掃除用具を持って、それぞれの与えられた場所に移動していた時、中央にある吹き抜けから女性達の甲高い声が聞こえてきた。


アイドルでも来たのだろうかと思うほどの、叫び声に
重要人物が歩いているのか?と二階からのぞいで見た。


物陰に隠れて首から下しか見えないが、スラッとした体型、遠目でもわかるほど着ているスーツは高そうだった。


その人の周りを警備員が囲い、女性達からの歓声を少しでも遠ざけようとしている。


なるほど、警備員が出動した理由ね。


1人納得した時、見えた横顔に目が点になる。


えっ、うそ…


思わず、柱の影に隠れ、そっと下を盗み見た。


やっぱり、彼だ。


忘れようと思っても脳裏に浮かび、何度も首を振り忘れようとした。


物腰の柔らかさに好感を持った彼が、実は傲慢な男だったと知ったあの夜!突然、キスをされたが少しも嫌じゃなかった。


心も体も蕩けるキス
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