御曹司様はシンデレラを溺愛する
呼吸するタイミングがわからなく、息が止まりそうで彼の胸を叩いて抗議する。
「大人のキスも初めてなのか!かわいいやつ」
そう言ってぎゅっと抱きしめられるが、息を取り込みたいのに苦しくて仕方ない。
「ゲホ、ゲホ、苦しい…離して」
腕の力が緩んだが、抱きしめられている体は解放されない。
「大丈夫か?」
「もう、離して」
「なぜ?」
「仕事があるわ」
「お前は、早退したんだ。俺の仕事が終わるまでここにいろ。すぐに終わらせる。一緒に帰ろうな」
チュッとおでこにキスを残して、彼は自分の机に戻って仕事を再開する。
私はどうしたらいいの?
無駄に広い副社長室、ソファに座っていても落ち着かない。
突然、ノックされ彼の女性秘書の方が、ニコリッと笑いお茶菓子とコーヒーを出しに来た。
「ありがとうございます」
優雅な仕草さでカップとお茶菓子をテーブルの上に置き、微笑んでいるのに、目が怖い。
値踏みするような敵意ある視線は、あの夜、感じたものに似ている。
きっと私が、彼にふさわしくないと思っているのだ。
自分でも、そう思う。
私の何がいいのか彼に聞いてみたいと思う。