御曹司様はシンデレラを溺愛する

「お帰りなさい」


私は、彼の頬にキスを返すのが日課になっている。


「今日の記念日に」


手に持つ赤い薔薇の花束を差し出している尊は、一緒に暮らすようになって毎日必ず何かプレゼントをくれる。


「ありがとう。でも、もういいよ。尊の気持ちは届いているから、無駄なことにお金を使わないでほしい」


「無駄なことじゃない。俺がしたいからしているんだ。気にするな。それより、いい匂いがしてくる」


「うん、リクエストのホタテのシチューだよ。着替えてくるまでに準備しておくね」


「頼むよ」


私は、キッチンに戻りシチューをお皿によそい、バケットの代わりにご飯を用意してみた。


テーブルに並べたサラダに、ほうれん草のキッシュとアスパラベーコンを横に添えた。


「おっ、頑張ったな」


私が料理が得意じゃないのは引っ越してきたその日にバレた。


だが、彼は


「料理を作らせる為に一緒に暮らす訳じゃない。できないなら、外食でもいいし、シェフでも呼べばいいだけだ」


得意じゃないだけで、作れない訳じゃない。


シェフが作る料理の方が断然美味しいだろうけど、こうして料理を作っている私の料理を、彼は楽しみにしてくれているらしい。
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