御曹司様はシンデレラを溺愛する
運転手は迷う事なく目的のホテルに着いてしまい、ライトアップされた日本庭園を過ぎると、数台の車がロビー横に順番に着き、合同お見合いに出席するのだろう男女が順々に降りているところが見えてくる。
ポッと出の成り上がりの私と違い、優雅な仕草、華やかで上品な方々は、生まれながらのお嬢様、御曹司様と呼ばれるにふさわしい。
聞いてないよー。
優里亜なら生まれながらのお嬢様だから当たり前かもしれないが、私ではきっとボロが出る。
優里亜の代わりなんて無理だ…
運転手さん、このまま家に帰してください。
心で願っている間にもドアマンによって後部座席のドアが開いていた。
「お手をどうぞ」
そっと差し出される白い手袋をはめた手が、丁度いい高さで待機していて、無意識にその手に手を差し出し車から降りてしまう。
そして、パタンと背後で音が聞こえ振り返った時には、乗って来たハイヤーはいなくなり、真っ黒で威圧感がある高級車が次に止まっているところだった。
この車ってロールスロイス?
その高級車の後部座席から身長180センチほど、そして小さな顔にキリッとした一重の双眼、スッと筋の通った鼻、少し厚みのある唇をした男性が降りて来た。