未解答アンサー




ぽかん、と大きく口が開く。

自然と浮かんだ表情はあどけなく、きっとあいつは今、自分がどんな表情をしているかなんて考えることすらしてへんのやと思う。



トンネル型の水槽の下で、色鮮やかな魚たちをガラス越しに見つめ、彼女は口元を綻ばせた。



「見て、上牧!」

「見とる見とる」

「めっちゃ綺麗やで!」

「せやな」



子どもみたいにはしゃいで、あれもこれもと指を指す。

その様子に思わず笑ってまう。



「……なに笑ってんの」

「いや? 楽しそうでええなって」



今日、俺が水瀬と訪れたのは、外観が水槽みたいにたくさんの魚が描かれとる水族館。

大阪の水族館といえばここやろ、とやって来たわけやけど、付き合っているわけでもない俺らがふたりで来たのはひとつのかけが理由や。



試験の総合点を競って、負けた方が勝った方にジュースを1本奢る。

それが長い間俺らの間での約束やった。

でもついこの間の模試では今までとは違った。



水瀬が勝ったら俺にある話をする。

俺が勝ったらふたりでデートに行く。

そんで勝ったのは、俺やったってわけ。



からかい半分で言い出したことやったもんで、実際に俺の方がいい点数やったときは困ったわ。

だって今までにも一緒に出かけたことはようあったもん。

学校帰りの買い食い、好みがおんなじやから映画、なんの気なしに買いもの。

じゃあ改めてデートってなったら……どこ行ったらええねん! ってな。



せやから今、こうやって楽しそうにしてくれとる水瀬を見て、結構ほっとしたんや。






< 2 / 8 >

この作品をシェア

pagetop