未解答アンサー




アザラシの動きに合わせて生まれた白い泡を視線でたどるように、そのまま水瀬が俺を見上げる。

うっわあざとい角度。



「気もそぞろやなぁ、あんた」

「ごめんやん」

「まぁ、ええけど」



俺に背を向けて、水瀬が先を歩き出す。

あーあ、怒らしてもた。

そう思ってちょっと焦るけど、実はあんまり必死なわけでもない。



だって水瀬が怒るってことは、俺と楽しい時間を共有したいってこと。

水瀬が俺との時間を大切に思ってくれてるのがわかるから。



それに、素直に怒りを伝えられる関係って悪くないと思うねん。

なにもかも隠してたら、しんどいもん。

俺らがずっと一緒におって居心地がよかったんも〝好き〟って気持ち以外は、なんだって伝えて、言いあうことさえ楽しんできたからや。



だから俺は、今の関係も好き。

わーわー騒いで、そんでこんな言い方したら恥ずかしいけど……友だち以上恋人未満ってやつ。



でもちゃんと恋人になりたいって思ってるんやで?

せやのにデート中も水瀬に自分の気持ちを言わせへんのは、あれや。

好きって言葉は俺から言いたいねん。

全部あいつからチャンスもらったら、やっぱカッコつかへんもん。



「水瀬」

「なんやねん」

「怒ってんの?」

「別に怒ってへんけど!」

「けど?」

「腹立つだけ!」

「いや怒ってるやん」






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