未解答アンサー
白い手がぎゅうと拳を作る。
いつもなら見かけない、デートのための、ほんのちょっとだけヒールのある靴がふかふかの床に突き刺さる。
髪が強張った肩で跳ねた。
「俺が考えてたんは水瀬のことやで」
「っ、」
後ろから声を投げかけると、ぴたりと足が止まる。
慌てて背中にぶつからんよう器用に避けて、彼女の前に回る。
わずかにうつむきがちになった顔を覗きこんだ。
「真っ赤やぞ」
うるさい、と言われてこんなに嬉しくなるのは、相手が水瀬やから。
うん、正直に言おう。
あんまりにも可愛いから、思わず笑みがこぼれてしもた。
海に射し込む光のように、きっと優しく。
なぁ、水瀬。
怒らんといて欲しいねんけどさ、俺はお前に気持ちを伝えるのはもうちょっと先がいいって思ってんねん。
勝手なんはわかってるし、後でお前に言ったら絶対文句言われるんやろうってのは重々承知しとる。
でも俺らの関係を変えるのは、進路もちゃんと決めて、胸張ってお前の前に立てるようになってからがいい。
おんなじ学校行くって話、冗談になんてしてたまるか。
誰にも文句言われへんレベルで、ふたりで一緒がいいから。
せやから俺は頑張るんや。
頑張って、受験勉強をおろそかにせん。
そしたらさ、そん時にはさ、お前にちゃんと俺の気持ち全部言うから。
なぁ、待ってろよ!