国王陛下の極上ティータイム
「それより、何かあったのですか?」とディオンはクロードに尋ねる。


「あなたがわざわざここに来たということは、相当のことがあったのでしょう?」


するとクロードは眉をひそめて「ああ」と頷く。


「緊急事態だと部下から連絡があった。直接ここに来たのも、事態が急を急ぐものだったからだ」


クロードのただならぬ雰囲気に、ランティスも真剣な顔になる。


「その内容は?」

「今から説明するが、その前に」


話を切ったクロードは、部屋の隅で茶の片づけをしているクラリスに目をやった。


「あの者を部屋から出してほしい」


あの者、とはつまりクラリスのことだ。


「あの者は何者だ?まさかスパイじゃないだろうな」

ギロリと鋭い目で睨みつけられて、クラリスは動きを止める。


ランティスは「スパイじゃないさ」と笑った。


「最近やってきたお茶係のクラリス。オルレアン伯爵家の侍女をしていたが、あまりの茶の上手さに王太后様が惚れ込んでいて、城に来てもらうことになった」


クロードはクラリスを睨みつけながら「オルレアン伯爵の」と元主人の名前を口にする。


「貴族の出ではないけれど、彼女の茶の腕前は確かだ。それに面白い娘だよ」

「面白い?」


眉をひそめたクロードにランティスはクスリと笑った。


「お前も、クラリスとともにいれば分かるだろう」


クロードは肩をすくめた。
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