国王陛下の極上ティータイム
それに気づいたクラリスは、途端にひどく寂しい気持ちになった。


国王陛下の願いは叶わない。


仲の良い友人であるはずのディオンとクロードですら、立場を意識せずにランティスと接することは難しい。

騎士団長のクロードは、命令されない限り口調を戻さない。それは騎士団は国王陛下にお仕えするという立場のため。それを騎士団員にも見せるためだろう。

側近のディオンも、陛下を支えるという立場を常に意識し、いかなるときも陛下の威厳が損なわれないようにするために常に敬語と敬称で呼ぶことを忘れない。そのため命令されてもこのことだけには絶対に従わないと心に決めている。


国王陛下という冠なしに、ランティスという人を見つめる者はこの世界のどこにもいないのだ。


その現実を知り、クラリスは急にあの憎らしい笑顔が哀しいものに思えてきた。


もしかしたらあの笑顔は、寂しさを紛らわせるものなのかもしれない。

あるいは、騙すためのものかもしれない。常に笑顔でいることで、周りの者に王は優しく寛大で明るい人柄だと、自分は今楽しいのだと、決して寂しくなんかないんだと、そう思いたかったのかもしれない。


そう考えてクラリスは、ぎゅっと締め付けられて息が苦しくなるように、胸の奥が痛かった。


ランティスが本当は寂しいのだとしたら、それに気づける人はきっとどこにもいない。ランティスもクロードも、国王陛下という画面越しで見つめているのだからきっと気づけない。

気づけるのは、きっと自分だけ。


クラリスだけ。


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