国王陛下の極上ティータイム
まさに神出鬼没。王宮内とはいえ衛兵も付けずにたった一人で現れる。国王陛下である身を分かっているのかどうなのか。良くも悪くも、ランティスの行動は国王陛下としていささか身軽すぎる。


「クロードと話していると肩が凝るからね」


「あいつはいつも真面目すぎる」とランティスは笑う。それから「内緒にしてね」と口に人差し指を当てた。そんなことしなくたって誰にも言うわけないのに、とクラリスは眉をひそめた。


「クラリスはどこかに出掛けるの?」

「城下に買い出しに」

「へえ、そう」

ランティスは穏やかに微笑んで、「俺もついて行きたいな」と言った。クラリスは顔をしかめる。

「何を仰るんです、無理を言わないでください」

言ってから気づいた。ランティスが少しさみしそうな顔をしたことに。しまった、と思った。この発言はきっとランティスを傷つけた。

すぐに謝ろうとしたけれど、それより先にランティスはいつもの顔をして「無理じゃないさ」と言った。

「でもまあ、今行ったらディオンとクロードに相当怒られるだろうからな」

また今度にするよ、というランティスの言葉を聞いてクラリスは少し安心したけれど本当はもっと傷ついているんじゃないかと不安に思う。

「今度行くときはクラリスを誘うよ」

「え、なぜです?」

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