国王陛下の極上ティータイム
「なぜって、それを聞く?」


ランティスは苦笑いした。デートの誘いも、甘い言葉すらも、クラリスには届かないのだと思い知らされる。そして、だからこそ彼女を手に入れたいという気持ちが大きくなるのだった。


「理由、知りたい?」


クラリスの頬をやさしく撫でながら、ランティスは囁くように言う。

その声は脳髄を溶かすように甘くて、クラリスの頬は朱に染まった。顔に熱が集まるのを感じる。


「ばっ、馬鹿にするのもいい加減にしてください!」


頬に触れている手を払い除けた。心臓が壊れそうなほど心拍している。


「なに、照れてるの?」


クラリス紅潮する頬を見て嬉しそうな顔をするランティスは、追い打ちをかけるように微笑む。とても楽しそうな、いたずら好きな少年のような顔。

「顔、真っ赤だよ?」

「違います!」

「そうは見えないけど?」

「絶対に違いますから!失礼します!」

その場から逃げるようにクラリスは離れた。最初は早足で、けれどその内走っていた。ランティスはそんなクラリスの様子を微笑ましく見つめていた。

クラリスは走ってそのまま王城の正門まで来ていた。門番は息切れしているクラリスに「どうした?」と尋ねたのだが、クラリスは「何でもないです」と答えるしかなかった。

一つ深呼吸をしてからクラリスは城下に向かった。




< 110 / 208 >

この作品をシェア

pagetop