国王陛下の極上ティータイム
初めて訪れた城下の街はとても活気づいていた。屋根は全てオレンジ色で統一され、屋根の隙間から見える澄んだ青空が美しかった。人々の表情も晴れやかで、楽しく話している様子がうかがえる。

親しく話をしている人々を見て、クラリスは幼少の頃の暮らしを懐かしく思った。クラリスが暮らしていた村も、貧しいけれど人との繋がりが暖かかった。そんなことを思い出しながら、踏み出す一歩は市場へと近づく。

ブランがクラリスに手渡したものは買うものを書いたメモだけではなかった。市場の行き方が分からないだろうと思ったのか、地図も渡してくれていた。その地図を見ながら市場に向かう。


市場に近づくにつれて人の数が多くなり、市場にたどり着くとそこには大勢の人々がいた。


市場にはいくつもの天幕が張られていた。魚や花、肉に野菜、本から雑貨まで、たくさんの物が売られている。

クラリスは地図と天幕を交互に見ながら紅茶が売られているという店を目指した。

店の名前は「紅茶屋」。とても分かりやすいが捻りがまるでない。

紅茶屋、紅茶屋。胸でそう繰り返しながら天幕を見るが、なかなか見つからない。本当にあるのだろうか、もしかして見落としただろうかと不安に思いながらも歩く。

そして天幕の終わりが見えてきたころ、ようやく「紅茶屋」と書かれた看板の天幕が見えてきた。


「すみません」

「はいよ、いらっしゃい」

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