国王陛下の極上ティータイム
「それからよくこの茶を飲んでいたのよ。ローズヒップは美しくなれるからって」

あの頃は若かったと懐かしむような王太后の話にクラリスは耳を傾ける。


「あの方が亡くなってからも忘れられなくて、ずっと飲んでいるわ。そしてね、少しでも美しくいられたらと思うのよ。今更この茶を飲んでもあの頃の美しさにはきっと戻れないのにね」

「笑ってしまうわよね」という言葉にクラリスは首を横に振って「すごく素敵だと思います」と答えた。


「王太后は今も前王に恋をしていらっしゃるのですね」


瞳を輝かせて大切な人の話をする王太后が羨ましく、微笑ましい。

本当は恋は幸せなのだと心から実感したい。いつか王太后のように幸せになれたらいいなとクラリスはつい心の底で願ってしまった。


王太后は目を見開いて、それから心から嬉しそうに目を細めた。


「ふふ。そうね、私はまだ恋をしているわね」


いくら年を重ねても心は乙女だ。大切な人を想う気持ちはどれだけ時間が経っても変わらない。人はきっとそれを愛とも呼ぶのだろう。


「そうだわ、今日はこれから前王のもとへお出かけするのよ」

恋する乙女のような純粋さを瞳に宿した王太后は嬉しそうに語る。

前王に会いに行く、それはきっと墓参りだろうことはクラリスにもすぐに分かった。

「まあ、それはデートですね」

「ええ、デートね。折角前王に会いに行くのだからおめかしをしなくてはね。いつもよりうんと美しくなって、前王を驚かせてさしあげたいわ」

目っ気たっぷりに微笑む王太后は幸せそのもので、クラリスまで嬉しくなってしまった。
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