国王陛下の極上ティータイム
「そういえばクラリス、ディオン殿から聞いたぞ。自分はランティス様に今後お茶をお持ちしない方がよいとクラリスが言ったと。通りでランティス様はここ数日、クラリスではなく私に茶を頼まれるのだな」


「なぜそのようなことを言った」とブランの言葉にクラリスの胸は突かれたようで、目を見開いた。それから一つ深呼吸をするとブランを見据えた。


「今国が大変なときに、陛下を更なる危険に晒すわけにはいきません。自分が陛下を危険に晒す可能性が少しでもあるなら、それは排除しなければならないと思ったのです」

「だからって、何も悪いことをしていないお前が身を引くのか?ランティス様はお前の茶を気に入られていたのに」


ブランの言葉はひどく優しいものだった。クラリスはその言葉を聞いていると、自分はランティスに接触しても良いのだと思えてしまう。ついそちらに手を伸ばしてしまいそうになる。


「王族の方々を一番に考えなければならないと、そう教えてくださったのはブランさんですよ」


その優しさを断ち切るようにクラリスは言う。その優しさに手を伸ばしてはならないのだ。陛下を守るために切り離したのだから。そう自分に言い聞かせた。


「クラリスは、こんな状況でも本当に強いのだな」

ブランは微笑むとクラリスの頭に手を乗せた。


「けれど、相手を思ってしたことが、本当に相手のためになっているとは限らない」


それからブランはぽんぽんとクラリスの頭を撫でると茶室を出て行った。クラリスはその後ろ姿を見ていた。

ばたんと戸の閉まったのを見て、ブランの言葉を反芻する。

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