国王陛下の極上ティータイム

相手を思っての行動が相手のためになるとは限らない。それはつまり、陛下から離れることが陛下のためにならないということだろうか。

しかしクラリスにはそれが意味することが何であるのかが分からなかった。どう考えても、自分が陛下の傍にいることは陛下に悪影響しか及ぼさないように感じられたのだ。

いくら考えても答えは出てこず、クラリスは考えるのを諦めることにした。それから食器を洗おうと、茶室に備え付けられた流し台の蛇口を捻った。


それから数日間、王宮内は物々しい雰囲気に包まれていた。

王宮内を行き来する騎士団員の数が増え、王宮内のあちこちでフォルストへの攻撃がいつになるかという話がなされている。使用人達はそんな騎士団員の醸し出す雰囲気に困惑しつつ心が落ち着かないまま仕事に取り組んでいた。

けれどクラリスはこの時も変わらず、浮き足立つ衛兵なんかを尻目に冷静に茶を淹れていた。ブランもいつも通り、変わらずに読書しながら茶を啜っていた。騎士団員達の話も雰囲気も、この茶室には届かない様子だった。

王太后に茶を届けた帰りに、クラリスは見知った人物に出会った。

「ディオン殿」

「これはクラリス殿」

ディオンが資料を片手に回廊を歩いてきた。ここのところはフォルストの件について毎日のように話し合いがなされていると聞く。ディオンはその全てに参加しているのだろう、笑顔では隠しきれない疲れが目に見えて分かった。
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