国王陛下の極上ティータイム
その日の業務が終わりブランが寮へと戻った後も、クラリスはまだ茶室に残っていた。

ランティスのために茶を淹れようと思っていたのだが、何の茶を淹れたら良いか考えあぐねていたのだ。

今現在、外国産の茶葉は入ってきていない状態だ。いつもよりも茶葉の種類は少ない。キーム、エメ、ジルダ、アーサ。淹れるとしたらこの辺りだろうか。ストレート、ミルク、グレーズ。思いつくものはどれもしっくりと腑に落ちない。

さっぱり何も思い浮かばず、さあどうしようかと思ったとき、視界の端に本が映った。いつもブランが腰を掛ける椅子の上に、紅茶に関係した本が置かれている。おそらく今日ブランが読んでいたものだろう。

今だけなら許されるだろうか、とクラリスは思ってその本の頁を捲った。

いくつも書かれている茶の種類はどれもクラリスには目新しく映る。王宮のお茶係では仕入れていない茶葉も数多くあった。淹れてみたいと思う一方で、今はそれは叶わないのだと思うとずんと胸が沈む。

また一頁捲ると、ハーブティーの種類が現れた。紅茶には出すことのできない美しい水色の茶の数々は想像するだけでうっとりしてしまう。

ハーブティーの特徴は、その茶に効能があることだ。例えばローズヒップなら美肌効果といったように。調べてみると面白いもので、風邪や便秘に効くものもあれば、不安を和らげる効能を持つものもあるらしい。

また一頁捲るとクラリスにも馴染みのあるハーブの名前が出てきた。その効能を見ると、今のランティスにきっと必要なものばかり書かれている。

これだ。そう思うが早いかクラリスは本を置いて立ち上がるとそのハーブを探しに茶室を飛び出した。

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