国王陛下の極上ティータイム
それから無事にそのハーブを探し出したクラリスは、ランティスの執務室の前にいた。

ノックしようとしたが、勇気が持てず一つ深呼吸をする。

この茶を届けないといけない。届けたい。誰に何と思われようと、ランティス様にこの茶を飲んでほしいのだ。そう心で呟くと、大きく息を吸い込む。覚悟を決めてノックした。


「失礼致します」


執務室ではランティスが執務机に大量の本と資料を積み上げていた。ディオンは資料を探しに行っているのか部屋にはおらず、ランティスは一人机に向かっている。とても難しそうな顔をしていて、クラリスの声など聞こえていない様子だった。

またいつになく疲れている様子だった。ディオンも言っていたが、ランティスには相当の疲労が溜まっているらしい。

いつもとは違うランティスの様子に緊張しながらも、クラリスはもう一度呼びかける。


「ランティス様、茶をお持ちしました」


するとランティスは弾かれたように顔をあげる。呼びかけたのがクラリスだと気づくと、信じられないと言わんばかりに小さくクラリスの名前を呼んだ。


「クラリス、なぜ?」


「ディオン殿に申しつけられました。ランティス様に茶をお持ちするようにと」


そこまで言うと急に恥ずかしくなって、「必要ないようならすぐに下げますが」と付け加える。

ランティスは首を横に振ると立ち上がり、「いや、いただくよ」とクラリスに近づいた。


「きみが来てくれるなんて思ってもいなかった」


嬉しそうな表情を浮かべるランティスに、クラリスの心臓は大きな音を鳴らして心拍し始めた。何と言ったら良いか分からず黙り込んでしまう。

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