国王陛下の極上ティータイム
「良い匂いだね。これは?」
「スペアミントのハーブティーです。お嫌いでした?」
「まさか」
ランティスはガラスのティーカップを持ち上げて鼻に近づけると匂いを嗅ぐ。
「とても好きだよ。ありがとう」
その笑顔をまた見ることができた。クラリスはそれだけで幸せだった。心に刻みつけるように言葉を噛み締める。
ランティスは一口啜ると「まるで夢を見ているようだよ」と言う。
「きみはもう俺のもとには現れてくれないと思っていた」
クラリスはうっと言葉に詰まる。何も言えずにいるクラリスをランティスは面白がった。
「嬉しいよ」
その優しい微笑みに、クラリスの胸は喜びで満ちていく。
顔には熱が集まり、鏡を見ずとも自分の顔が林檎のように赤色になっているのだろうことは簡単に想像できた。
「その節は、失礼な言動をいたしました。すみません」
ランティスはその様子を可愛らしいと思いながらも「今更だな」と笑った。
「その素直なところがクラリスらしさだろう?」
クラリスは何も言えなかった。喜び、嬉しさ、恥ずかしさ、色々な感情が胸の中で暴れ回っていて、声に出そうとしたら喉に詰まってしまったようだった。
「ランティス様は、やはり私をからかっていらっしゃるのですか」
感情を落ち着かせてなんとか言ったのはそんな言葉だった。
ランティスは「からかっていないさ」と首を横に振るとこう言った。
「口説いてる、かな」