国王陛下の極上ティータイム
「フォルスト現王のアルベルトとは、幼い頃から親しいんだ。お互い次期国王という立場で、今は国王同士。同じ立場にあるからこそ、昔から悩みも何でも言い合えた」

爽やかなスペアミントの香りが漂う。ランティスは昔を懐かしむように目を細める。


「だからこそ分かるんだ。アルベルトの行動にはきっと意味があると。けれどアルベルトは何も言ってこない。何も言わない」


握られた拳は震えているように見えた。それは怒りなのか、悲しみなのか、クラリスには分かりかねたが、感情の高ぶりだろうことは伝わってくる。


「間違えたのだろうか、俺は」


その言葉はまるで泣きそうだった。幼子がはぐれた母の手を探し求めているようにもクラリスは感じた。寂しいのだと、心が叫んでいるようだと。


「すまない、忘れてくれ」


ランティスははっと我に戻ったように笑う。その笑顔は取って貼り付けたような、見ている方が苦しくなるような笑顔だった。


「いいえ。ランティス様はきっと何も間違えていませんよ」


この国の王はいささか優しすぎるのだ。自国の民に対しても、同盟相手の国王に対しても。どれだけ騎士団長達に懇願されても騎士団を送り込むことを許可しないのは、相手の国の思ってのことだ。

貴族社会に君臨しているのに、どうしてここまで優しくいられるのだろう。もっと厳しくても良いのではないのかと思ってしまう。


「間違えていたとしても、きっとランティス様なら気づくことができる。きっと直すことができる。相手のことをそれだけ考えていらっしゃるのですから」


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