国王陛下の極上ティータイム
クラリスは料理長の言葉を反芻しながら茶室に戻る。

ランティスの優しさは、心の器の大きさからくる寛大さに違いない。そして人を人だと思えることもあるのだろうとクラリスは考えた。

だからこそ今回のフォルスト王のことに関しては、きっとそれだけではないのだろうと思った。


きっと信じているのだ、フォルスト現王のことを。あいつが理由なく自分を傷つけるわけがないと、何か理由があるはずだと信じている、否、信じたいのだろう。

同盟国の王としてではなく、親友として。

昨日の夜のランティスの顔を思い出してクラリスはまた胸が痛くなった。ランティスが今何を思っているのか、フォルスト王を思うその心に思いを馳せるだけで胸が締め付けられるくらいに痛い。

何か自分もランティスの役に立ちたいのに、今は何も役に立てない。茶を淹れるのが仕事なのに、それすらも満足にできない。

役に立ちたいという気持ちばかりが先行して何もできない今の状況に、クラリスは歯痒さを感じて拳を握りしめた。

その時だった。



「クラリス」



凛と響く鈴のような声だった。

振り返るとそこにはランティスがいた。回廊の窓辺に腰掛けている。


「ランティス様…?」


ずっと頭の中で思い描いていた人が今ここにいる。そのことに驚いて、思わず反応が鈍くなる。


「なに、どうした。そんな驚いた顔して」


「ほんとクラリスは面白いね」と目を細めて笑うランティスの顔を見て、クラリスの顔に熱が集まる。


「ランティス様、こんなところで何をなさっているのです!」


クラリスはほとんど怒ってランティスに詰め寄る。
< 154 / 208 >

この作品をシェア

pagetop