国王陛下の極上ティータイム
その言葉で、ランティスのその手が握られていることにクラリスは気づいた。


「ランティス様…」


笑顔の仮面を貼り付けてクラリスをからかって、いつも通りに振る舞っているけれど、本当は怖くて仕方ないのだろう。

親友であるフォルスト現王がどんなことを言うのか、本当に裏切ったのか。きっと色んな思いが交錯しているに違いない。

伏せられたランティスの瞳が哀しくて、クラリスの胸は痛んだ。


「きっと、大丈夫です」


クラリスは精一杯の笑顔でそう告げた。ランティスは顔をあげ、クラリスを見つめると目を見開く。


「フォルスト王はランティス様の御親友なのでしょう?その方がどんなお方なのか、ランティス様が一番知っているはずです」


自分はずるい性格をしているとクラリスは思った。


「だから、きっと大丈夫です」


大丈夫なんて何の根拠もない言葉だ。今に至ってはどちらに転ぶかも分からず、そしてこの国の未来まで決まってしまうという重大な時であるというのに、そんな言葉を使ってまでクラリスはランティスを励ましたのだ。

ただ、ランティスの不安を取り除きたかった。いつものように笑っている顔がただ見たかった。

ランティスはクラリスの言葉を呆気にとられたように聞いていた。

それからふっと吹き出すように笑うと「そうだね」と眉を下げて目を細めた。


「ありがとう。元気をもらった」

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