国王陛下の極上ティータイム
そしてランティスはそのことに気づいていたのに、きっと今は混乱して忘れてしまっているのではないだろうかとも思った。

それではいけない。せっかく思っていることがあるのにお互いに気づかないままではいけない。

2人の王がすれ違ったままでは2つの国に最悪の結末が訪れる。


「いけない、このままじゃ」

クラリスは拳を握りしめた。

どうにかしなければならない。自分がそんな立場にないことをクラリスは重々承知していた。けれどそれでもやらなければならないという使命感がクラリスを突き動かそうとしている。


「クラリス?何をしようとしている?」


ブランに問われてクラリスは顔をあげた。


「ブランさん。このままではいけません。気づいてしまったんです。2人の王がすれ違ったままでは、このままでは__」


「クラリス」


ブランは鋭い口調でクラリスの名前を呼んだ。


「お前の役職は何だ」

「__王宮のお茶係です」


その答えを聞いたブランは「お茶係は何が仕事だ」と問うた。


「クラリス、お前の仕事は茶を淹れることだろう?ランティス様やフォルスト国王様に何か意見を言おうとしているのなら、それはお門違いというやつだ」


ブランの言葉は全くもって正しかった。

どこにも反論の余地などなく、正しく正論であった。


「分かっています。けれど__」

「分かっているのなら、仕事をしろ。王宮お茶係ならば」


そう言い残すとブランは仕事に取り掛かった。王太后とジュリエッタ王女に茶を届ける様に申し付けられていたのだ。

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