国王陛下の極上ティータイム
「今から茶を淹れる。手伝ってくれ」

「…はい」


クラリスは拳を握りしめて首を縦に振る。

茶を淹れるのにいらない感情を押し殺そうとした。

けれどどうやったって収まらなかった。

傷ついたランティスの顔で胸がいっぱいになる。


ジュリエッタ王女に茶を届けた帰りの回廊で佇む男性を見つけた。

会釈をして通り過ぎようかと思ったが、その人物がフォルスト国の王、アルベルト国王だと気づいて思わず足を止めてしまった。

アルベルトは回廊の外の景色を見つめている様子だったが、クラリスの気配に気づいたのか振り返った。

その表情は憂いていて一国の王とは到底思えない儚い表情だった。

アルベルトはクラリスの顔に見覚えがあるようで、クラリスに声をかけた。


「ああ、貴女は先ほど茶を届けてくれた__」

「クラリスと申します」

「そうか、クラリス殿か」と目を細めて微笑む、アルベルトのその表情はランティスに似ているとクラリスは思った。


「こんなところに佇まれて、いかがなさいましたか?」

クラリスの問いに「いや、何もない」とアルベルトは答えた。


「ただ、自分の気持ちを整理していただけだ。すぐ部屋に戻る」


「ではな」とアルベルトは片手を上げて部屋に引き返す。

その後姿が寂しそうで、クラリスは思わず呼び止めてしまった。

< 167 / 208 >

この作品をシェア

pagetop